吉川和之
49歳。
愛知大学法経学部卒業。
伊勢の印刷会社を経て、伊勢志摩編集室へ。
7年半在籍ののち、「企画室KAZU」として、フリーで企画編集を手がける。
2000年春、編集長の坂氏とともに「月兎舎」を立ち上げ、ローカル誌「NAGI」創刊。
三重には「NAGI」という季刊誌がある。
本気で遊ぶ大人たちの本。
情報の羅列だけじゃない、地域の匂いと色がしっかりと織り込まれたローカル誌。
どのような本なのか、内容をすべて書いていくことは不可能である。
ひとつ言っておくなら、「NAGI」は三重県が他に誇れるひとつであると思う。
今回の「三重の100人」は・・・・
ふるさとを刺激する大人のローカル誌「NAGI」の発行人・吉川和之氏だ。
【三重カルテ】
吉川氏の三重度を知る10の質問。
Q1:生まれたところはどこですか?
伊勢です。
Q2:生年月日を教えてください。
1961年(昭和36年)12月19日です。
Q3:三重を離れて暮らしたことはありますか。
大学の4年間だけ。
大学が愛知県だったので豊橋で4年暮らしました。
Q4:なぜ三重県に拠点を置かれたのですか?
実は名古屋で仕事が決まっていたんですが、でも実家から通えるところだとその分遊びにお金が使えるじゃないですか(笑)。
恥ずかしながらそんな理由だけで伊勢に戻りました。
Q5:三重県でお気に入りの場所は?
熊野の丸山千枚田です。
Q6:三重県でお気に入りのお店は?
伊勢の河崎町の「つたや」さんです。
昔ながらの食堂みたいなところですが、ここのカツカレーが好きです(笑)。
Q7:三重に住んでいて「よかったなー」と思った瞬間は?
伊勢神宮の存在を感じるとき。
年間500万~600万人のお客さんが来てもらえる特別な土地だと思います。
Q8:逆に三重に住んでいて「つらいなー」と思ったことは?
本の仕事をしてると常にどこにいてもつらい(笑)。
まあそれは冗談として・・・他に住んだ経験が短いのでよくわかりません。
Q9:あなたが考える三重の自慢は?
多様性です。
三重は南北に長く、気候も言葉も食べ物も文化も考えかたも違う。
非常に楽しめるところだと思うのですが。
Q10:「住みたい都道府県ランキング」。あなたなら三重を何位に?
1位でしょう。
こんなにのほほんと過ごせるところはないような気がします(笑)。
海、山、川がすばらしいし、暑くも寒くもないし。
バイク乗りにはサイコーですかね。
なんと!
3月1日に発行される「NAGI」は10周年記念特別号。
毎年4冊。
10年で40冊。
40冊目の「NAGI」の編集作業に追われる編集室でお話を聞いた。
――まず最初におうかがいしたいのはなぜ「NAGI」という名前なのかということなんです。「凪」って風のないおだやかな状態のことですよね?
吉川 確かに言葉の意味はそうなんですが、あえて逆説的につけたみたいなところがあるんですよ。
自分は39歳のときに「NAGI」をつくった。
当時はフリーで仕事をさせてもらっていて、大きな波風もなく、どこか落ち着いてきた感があった。そろそろ人生に波風を立てようかな、立てなきゃいかんな、と。
そう自分に言い聞かせるために、あえて「NAGI」と名づけたんです。
ですので、「NAGI」の創刊号にはこんな言葉が踊っています。
「そろそろ人生に波風を立てませんか――?」
――実際に「NAGI」を創刊されて、編集室である「月兎舎」を立ち上げられて波風は立ちましたか?
吉川 ええ、それはもう、台風のような波風が(笑)。
最初の3号目ぐらいまでは本当につらかった。
家にまったくお金を入れられませんでしたから。
しかもちょうど子どもが受験とかそういう時期を迎える頃でしたし・・・貯金があるわけでも親が金持ちなわけでもありませんでしたから・・・。
幸い妻が美容師だったので、なんとか食べてはいけましたけど。
あの頃はどれだけ締め切りに追われても家で「忙しい」とはいえなかった(笑)。
だってお金を入れてませんから。
だから徹夜明けの朝でも、息子のお弁当をつくったりしてました、罪滅ぼしに(笑)。
――吉川さんは、「NAGI」の中でもよく書いていますけれど、車やバイク、カヌーいろいろやってらっしゃいますよね?
吉川 あれは仕事だからです。そういうことにしておいてください(笑)。
今でこそなんとか食べていけるぐらいの状況にはなりましたが、決して余裕のある暮らしをしてるわけじゃありません。
なのにお金のかかるクラシックカーに乗ってバイクをいじってたら、家族もまわりも怒るじゃないですか(笑)。
ですから、仕事でやってるんだ、それも仕方なく・・・みたいな感じで家族には説明してます(笑)。
まあ冗談はさておき、私たちモノ書き、モノづくりの仕事って夢を売る仕事じゃないですか。
ですから「ビンボーはいいけど、ビンボー臭いのはアカン」と思うんですよ。
これも自分を正当化しようとしている言葉ではありますが(笑)。
まあ紙面などでは優雅な雰囲気を演出してますが、それは湖面を泳ぐ白鳥と同じです。水面の下ではもう足はバタバタ漕いでます(笑)。
――それにしても「NAGI」は面白いですね。私(隊長)の妻M子も大好きで、「古民家レストラン」特集とか「前もの寿司」特集など食に関する特集のときの「NAGI」はすべて揃えてます(笑)。
吉川 それはありがとうございます(笑)。
確かに「NAGI」は硬派なローカル誌だと思います。
つくっている自分がいうのもなんですが、よくこの硬派な路線で10年も続けてこられたなあ、と思います。
もちろん我われもがんばったけれど、これは三重県人の方向性というか土壌があったからなんでしょうね。
それに我われを理解して支援してくれたスポンサーがいたからやってこれたんです。
そういう意味では非常に誇らしいし、ありがたいと思います。
――これからの先の展望、この先10年後の「NAGI」の夢などをお聞かせください。
吉川 やはり次の世代につなげていきたいですね。
デジタルの時代になってモノをつくる人、つくり手の姿勢がなんか変わったと思うんですよ。お手軽というかすぐリセットするっていうか・・・。
私はもっと職人的なモノづくりをしていきたいし、その姿勢から生み出されたものを大切にしていきたいんです・・・・。
あとはローカル誌としてもっともっと極めていきたい。
もっと自分も楽しめる本をつくっていきたいです。
「NAGI」10周年特別記念号は、2010年3月1日に三重県の主な書店で販売。
定期購読、ネットでの注文は、以下の関連リンクまで。